研究・考察

【研究】嘴平伊之助(はしびらいのすけ)【猪突猛進】

嘴平伊之助(はしびらいのすけ)。公式年齢は15歳。”獣(けだもの)の呼吸”の使い手です。

東京府奥多摩郡大岳山出身。誕生日は4月22日で、好きな食べ物は”天ぷら”。

CVは松岡禎丞(まつおかよしつぐ)さん。

本作は伊之助の心の成長物語とも言えます。松岡さんも物語の進行や場面にあわせて、声の出し方や演技を変えていらっしゃいます。

以下、最終話・ファンブック等のネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。

伊之助の初登場シーンと日輪刀

初登場は第3巻。二刀流の剣士です。頭にかぶっているのは、伊之助を育ててくれた猪の皮です。

日輪刀の色は「藍鼠色(あいねずいろ)」。

「藍鼠色」は日本の伝統色のひとつで、青みがかった灰色をしており、刀鍛冶の鉄穴森(かなもり)さんも「渋い色」「刀らしいいい色」と見惚れていました。

最初は敵キャラか?と思わせる演出で、アニメ版では声優さん(CV:松岡禎丞さん)も「敵か味方か分からない感じで」演じるよう言われていたそうです(TVアニメ『鬼滅の刃』 公式キャラクターズブック 弐ノ巻 (ジャンプコミックス セレクション)p.58より)

伊之助の歩み

本作は伊之助の心の成長物語でもあります。

伊之助は物心ついたときには親はなく、山の中で猪に育てられて大きくなりました。

名前や誕生日は、身に着けていたふんどしにちゃんと書いてあったそうで、近所の?おじいさんが読んで教えてくれました。

このおじいさんとその孫がいたから、幼い伊之助は人間の言葉を学べています。

最終選別

伊之助は、暮らしていた山にたまたまやってきた鬼殺隊士と戦って倒したんだそうです。

そして鬼殺隊や最終選別のことを聞き出し、参加して合格しました。

ただ、みんなより早く山に入って最初に山から出てきたので、ほぼ定時に到着した炭治郎とは出会ってないようです。

育手なし、呼吸や剣術も我流で通過。天才ですか。

”獣の呼吸”は”風の呼吸”と似ているそうで、風の派生の呼吸という扱いになっています。

ここから、伊之助の世界がひろがっていきます。

でも、伊之助に倒された鬼殺隊士の人、その後どうなったんでしょう。日輪刀も奪われちゃったんですよね。かわいそう。ちゃんと返してもらえたんでしょうか?

初登場時

初登場時は女の子を踏みつけにしても全く気にしない、乱暴な野生児でした。

「他の生き物との力比べだけが唯一の楽しみ」で、「仲間」という概念はありませんでした。

炭治郎にも何度もキレられています。

「藤の花の家紋の家」が変わっていくきっかけに

炭治郎や善逸と一緒に「藤の花の家紋の家」で療養したことが、伊之助が変わっていくきっかけとなりました。

藤の花の家のひささんや炭治郎から優しくされ、「ほわほわ」した気持ちを感じるようになり、伊之助は少しずつ変わっていきました。

那田蜘蛛山での戦いで見せた成長

その後の那田蜘蛛山では、炭治郎と連携・共闘して戦っています。

「自分が前に出る戦い」だけしかしてこなかった伊之助が、炭治郎の指示を聞いたり意図を汲んだり、炭治郎が鬼を斬るためのサポートをしたりと、「協力して戦う」ことを覚えています。

これは炭治郎の指示の出し方の上手さや、伊之助の頭の回転の速さ、炭治郎への信頼も大きいでしょう。

炭治郎やひささんの言葉を思い出して気持ちを奮い立たせるなど、短期間で「心」を成長させている様子もわかります。

広い世界のなかでの自分を知る伊之助

助けに来た冨岡義勇の剣技を見て、伊之助はその凄さに圧倒されました。

那田蜘蛛山の戦い後は「俺ってもしかして強くないのかも」と、自信を失ってかなり落ち込むなど、繊細な部分もあるようです。

機能回復訓練でも自分より小さいアオイやカナヲに負け、「負けなれていない」ためにふて腐れていました。

「感覚が鋭い」伊之助は、感情の触れ幅も大きく、感受性もかなり高そうです。

人混みは苦手な様子で、駅や花街などでは炭治郎たちのうしろに隠れながらびくびくしたりしていますが、観察力は高く、頭の回転や切り替えはかなり速そう

感じたことをすぐ言葉や行動に変換でき、煉獄さんや宇髄さんにもすぐ影響を受けて真似っこしたりと、「素直」で「純粋」です。

山から出て広い世界を知り、いろんな人と出会い、自分を客観視することで、伊之助はさらに大きく成長したのではないでしょうか。

仲間を気遣えるようになった伊之助

無限列車で魘夢を倒したあと、炭治郎が受けた傷をとても気遣っています。

「車掌さんを助けて」という炭治郎の頼みも、何だかんだ言いつつもちゃんと聞いてあげています。

炭治郎と伊之助って、からみが多いですよね。いいコンビだと思います。

煉獄さんから受けた大きな影響

最初に煉獄さんに魘夢討伐の指示をうけたときから、伊之助はすでに「なんか凄かった」と感じていたようで、素直に指示に従って行動しています。

一瞬で伊之助の心をつかんだ煉獄さんすごいです。

伊之助は煉獄さんと猗窩座の戦いを間近でしっかり見ており、実力の違いと煉獄さんの凄さをこのとき肌で感じています。

そして「誰かを守るために強くなる」という思いを、このとき煉獄さんから受け取りました。

それまでは「戦って勝つため」「一番になるため」というのが伊之助の強くなる動機でしたが、そこに「誰かを守るため」という動機が加わったのです。

伊之助にとって煉獄さんとの出会いは、「鬼殺隊士」として生きていく動機にもなったのです。

「信じると言われたなら、それに応えること以外考えんじゃねぇ!!」「修行だ!!」

という直後の泣きながらのセリフからも、煉獄さんの思いをしっかりと受け継いだことが分かります。

煉獄さんとの別れ以降、伊之助はなおさら猪突猛進になったようです。

第11巻で堕姫と戦っている最中にも煉獄さんのことを思い出しており、「何のために修行してきたんだ」と自らを奮い立たせています。

このように、煉獄さんが伊之助に与えた影響はとても大きいです。

遊郭で見せた優等生ぶり

遊郭へ潜入したとき、伊之助はかなり優等生に成長していました。

”音柱”からの指示のとおりに行動し、服を着る・しゃべらない、など自分にとって苦痛と感じることも我慢できるようになっています。

アニメ版では店の女性たちにきちんと会釈までしていました。

「まきをを探す」という初期命令も忘れずに行動できています。

説明は炭治郎レベルに擬音や身振り手振りが多いですが、藤襲山での説明も意外ときちんと聞いていたようで、炭治郎に自分たちの階級について教えてあげています。

第9巻では、人間を守りながらの戦いを意識出来るようになっていました。

童磨としのぶと伊之助

童磨との関わりや母親、しのぶについては、無限城以外でもっとがっつりやって欲しかった。ここはちょっと残念な点ですね。

関連記事→【十二鬼月】童磨(どうま)【上弦】

伊之助はしのぶさんに初めて会ったときから、「どこかであったことがある」と思っていたようです。

しのぶさんはきっと、どこかお母さんに似ていたのだと思います。自覚のない淡い初恋と言えるかも知れないですね。

……と、本編ではこれぐらいしか読み取れなかったのですが、公式スピンオフ小説3「鬼滅の刃 風の道しるべ」第3話「花と獣」にて、伊之助がはっきりと「しのぶは……母ちゃんに似てたんだ」と言っていました。

鬼滅の刃 風の道しるべ」 は公式スピンオフ小説のなかでも、わたしがもっともおすすめする巻ですので、未読の方は是非読んでみてください!

関連記事→【感想】『鬼滅の刃-風の道しるべ』【公式スピンオフ小説3】

炭治郎を斬ることが出来なかった伊之助

「最後の戦い」で炭治郎が鬼になったとき、冨岡義勇は即座に「炭治郎を殺せ!!」と叫び、殺そうとしました。それが炭治郎を救うことでもあったからです。

伊之助も炭治郎を斬るべく対峙しましたが、炭治郎の頚を斬る瞬間「できねえ」と涙を流し、刃を止めました。

炭治郎は遊郭編で「もし俺が鬼になってもきっと仲間が頚を斬ってくれる」と信じていました。

義勇の思いや炭治郎の思いを伊之助も頭では分かっていたはずですが、伊之助に炭治郎を斬ることはできませんでした。

このシーンは思い出すだけでもいつも涙が出てしまう名シーンです。

もしわたしが伊之助役だったら、きっと泣いてしまってNG出しまくって非常階段でつめられます。

初登場時は「仲間」という意識はほとんどなかった伊之助。

それが最終巻では「仲間」を思い、思い出に涙を流せるまでに、成長していたのです。

本編終了後

炭治郎の近況報告書にて

鬼殺隊見聞録・弐』「炭治郎の近況報告書」での伊之助は、何だか子ども返りしているように感じます。

野生生活や鬼殺隊士としての生活から離れ、生まれ変わって普通の人間として一から成長していく、そんな未来を暗示しているようにも感じます。

「現代編」より

本編終了後は、神崎アオイと結婚して子供を授かったことが、第23巻掲載の「現代編」から分かります。

また、炭治郎と親しくなった伊之助が雲取山に来て暮らしたことが、おそらく現代編での「青い彼岸花」の顛末につながっています。

猪の目玉は魔除け?

「無限列車編」では、猪の皮をかぶっていたことと勘の鋭さで、魘夢の目玉からも視線をそらせていた伊之助。

猪の目玉は、実は魔除けの意味もあります。

昔から「猪目(いのめ)」は魔除けとして、神社や刀剣の装飾として使われています

ハート型のが「猪目」です。金具の色も渋いですね。

猪目(明治神宮)

猪に育てられた伊之助が言葉を喋れる理由

童磨も疑問に思って質問していましたが、猪に育てられたのに伊之助はどうして言葉を喋ることが出来るのでしょう?

答えは第10巻に収録の「伊之助御伽草子」にありました。

言葉を喋れる理由は、小さい頃、近所の?おじいさんが野良だった伊之助に読み聞かせをしていたからです。その孫もよく伊之助に話しかけていました。

伊之助はそのおじいさんのことを「おかきじじい」と呼んで、今では思い出すたびに「ほわほわ」するらしいです。

百人一首などの和歌も読み聞かせしてたようですよ。

関連記事→【感想】第10巻-人間と鬼【アニメ版「遊郭編」第6話~第8話途中まで】

伊之助のキャラ設定は秀逸

伊之助のキャラ設定は、読み込むほどに秀逸です。

初期設定では登場予定のなかったキャラだったそうですが、吾峠先生、絶対に伊之助を気に入ってると思います。

ちょっと惜しいのはやはり、童磨との因縁のエピソードをもっと拡げて欲しかった点です。

それはさておき、それにしても本当に、『鬼滅の刃』は誰を主人公にしても成り立つ内容になっていますね。