研究・考察

【考察】「珠世さんによろしく」というセリフ、お館様と珠世さんの関係は?

藤村さき
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 第6巻で柱合裁判が行われたとき、お館様は最後に炭治郎に「珠世さんによろしく」と言いました。このセリフ、違和感を感じませんでしたか?炭治郎も驚いて、思わずお館様の方へ駆け寄ろうとしていました。

 どうしてお館様は最後にそんなことを言ったのか?考察してみました。

 アニメ未放送部分・原作最終話までの内容を含みますので、原作未読の方はご注意ください。

お館様は珠世さんの存在をもともと知っていた

お館様は珠世さんの存在を、以前から知っていました。

 鬼舞辻無惨の支配から逃れ、反抗している鬼がいることは、過去の記録などから鬼殺隊内では知る人ぞ知る話でした。けれども、鬼殺隊もずっと珠世さんを見つけることは出来ませんでした。

 浅草での炭治郎の「鬼探し」の任務も、無惨や他の鬼が現われたことで有耶無耶になりましたが、本来は珠世さんを探し出すことが目的でした。

 そして、炭治郎は珠世さんとの接触に成功します。

 ただ、炭治郎は珠世さんと接触したことや、個人的に交わした珠世さんとの取引について、鬼殺隊に報告していないと思われます。

 ずっとのちの展開から考えても、もちろん(おそらく鎹烏を通じて)お館様は炭治郎の行動を把握しているはずです。

 けれども予想以上かつ予想外の結果を見て、お館様は、炭治郎を通して珠世さんに直接連絡をとるのやめた方が良いと判断したのだと思います。

 炭治郎と珠世さんとの間で個人的ににつながったこのかすかな糸が途切れてしまわないよう、お館様は細心の注意を払う必要があったのです。

「珠世さんによろしく」に込められた二つの意図

 お館様は、炭治郎と珠世さんの関係を守りつつ、”鬼殺隊”の秩序も維持しなければなりませんでした。

 そのために、「珠世さんによろしく」というセリフには、二つの意図が同時に込められていたと考えます。

1.炭治郎を”柱”たちの疑惑から守るため

 ひとつめは、炭治郎を”柱”たちの疑惑から守るという意図です。

 この直前に行われた柱合裁判では「炭治郎が鬼になった妹を連れて行動している」ことが問題となっています。

 そして、このあと行われる柱合会議では、「鬼舞辻無惨との遭遇」「珠世と愈史郎の存在確認」がお館様から”柱”たちへ報告されるはずです。

 その際に、炭治郎が珠世たちの助けを借りて鬼を倒したことが判明すれば、”柱”たちは炭治郎のことを「やはり鬼と近しい存在だ」と認識し、警戒して距離を置くようになるかも知れません。

 「柱合会議」本番前に「珠世さん」という名前を”柱”たちの前であえて出しておくことで、”柱”たちの思考を「炭治郎と鬼」から「お館様と珠世さん」という思考に向くようすり替えたのです。

 珠世さんについては、鬼殺隊歴が長い一部の”柱”たちは噂程度にでも知っている可能性が高いので、わずか以上に興味が向くはずです。

 そうすることで、つづく柱合会議で炭治郎と禰豆子の話が蒸し返されないようにし、炭治郎に対する”柱”たちの警戒と疑惑から守ったのです。

”柱”たちの「鬼」への抵抗は根強い

 柱合裁判でも”柱”たちの過半数は「炭治郎と禰豆子、ともに処分すべき」という意見で一致しています。

 お館様が「私が容認していた」と述べても反論が出るなど、かなり「鬼」への抵抗が強いことが分かります。

 鱗滝さんと冨岡さんという保証人がいたこと、稀血の中の稀血と言われる不死川さんによる実験(!?)でも禰豆子が理性を保ったことで、やっと”柱”たちもお館様の考えを受け入れ、追及を止めました。

 それでもお館様は「まだ快く思わないものもいる」ということを炭治郎に諭しています。そんな状態で、このあとの柱合会議が始まろうとしているわけです。

 「珠世さんのことも私は知っている」と布石を打つことで、珠世さんたちと炭治郎たちが協力して鬼を倒したことについて、「炭治郎は鬼と関係が近すぎるのでは?」という疑惑や警戒とは違う次元で聞いてもらおうとしたのです。

 そのことは、「炭治郎の話はこれで終わり」という、直前の別のセリフにもこめられていると考えられます。

2.炭治郎に対する注意とけん制のため

 二つ目は、炭治郎に対する注意とけん制です。

 炭治郎は「鬼殺隊員」でありながら、「鬼に任務で倒した鬼の血を提供する」という約束を「鬼」である「珠世さん」と「勝手に」しています。

 こんなの本来なら「要相談事案」です。それを無断で勝手にやっちゃってますからね。おそらくその後も、その約束についての報告を炭治郎はしていないでしょう。

 そして”柱”に対しても敬意が見られず、炭治郎は「組織の一員である」という自覚があまり無いように見えます。

 実際お館様は、”柱”が尊敬され優遇される理由を説明した上で、「口の利き方には気をつけるように」と炭治郎に注意しています。

「鬼殺隊の一員である」ということを忘れないよう注意するとともに、

「わたしに隠し事はできないよ」

というメッセージで、鬼殺隊の一員としての炭治郎の自覚を促し、態度や行動に対する注意とけん制もしたのだと考えられます。

お館様は”柱”を制御している

 お館様は”柱”に対しては一般隊士よりもかなりの特別待遇を取っています。

 そして掌の上で完全に操れる状態を保っていると考えます。

 悲鳴嶼さんや宇髄さんの回想でも、「欲しいときに欲しい言葉をかけてくれる」とあり、お館様は人の心に入り込むことが天才的なのだと思います。

 最初にお館様と出会ったときには反発していた不死川さんでさえ、瞬く間に懐柔されてしまっています。

 初めてお館様の声を聞いたときに炭治郎が感じた「頭がフワフワする」感覚というのも、もしかして何か声以外の理由があるのかも知れません。催眠術とかだったらこわい。

炭治郎に対するお館様の評価は高い

 お館様の炭治郎に対する評価はおそらく高いです。

 「わたしのかわいい剣士」で大切に思っているということは勿論ですが、禰豆子の特異性や炭治郎が短期間で見せた実績、鬼舞辻無惨や珠世さんとの接触を含めて、かなりの期待を持っていると思えます。

 「まずは十二鬼月を倒そうね」と”柱”たちの前で言ったこともそのあらわれではないでしょうか。

 これってつまり「ゆくゆくは”柱”を目指せる人材だよ」と、”柱”たちの前で宣言したと同じですよね。

 炭治郎に対する態度と声かけは、炭治郎を守りつつ”柱”たちを自分の思う方向に導くためでもあったのです。

”柱”にも伝えていないことはたくさんある

 アニメ版で胡蝶しのぶが「炭治郎の父親が”火”の呼吸を使っていた」とお館様に報告したとき、一瞬顔色が変わったように見えました。

 ”火”ではなく”日”かもしれないことや、”日”の呼吸の存在についてお館様は知っているはずなので、きっと”柱”にも伝えていないことが他にもたくさんあるのでしょう。

 「炭治郎が珠世さんに研究用の鬼の血を送る約束をした」ことも、現段階では”柱”たちにふせているかも知れません。今の段階でこれを伝えたら、ちょっと刺激が強そうですし。

 炭治郎も内緒にしてたつもりだと思いますが、お館様には間違いなくばれてます。

炭治郎が「浅草の鬼調査」の指令を受けた理由

 「浅草に鬼が潜んでいるという噂」があり、この「鬼」は「珠世さんたち」のことだったというのは公式ファンブックでも明らかになっています。

 この調査内容も微妙で、「鬼の被害」が報告されているわけでもなさそうです。おそらく特徴などから「珠世さん」なのではないか、と予測を立てていたように思います。

 そしてもし「珠世さん」を発見した場合、普通の鬼狩りならただ戦闘になるか逃げられるかですが、炭治郎なら違う結果を出してくれるという、お館様の「先見の明」が働き、炭治郎に指令が行ったのではないでしょうか?

2021年9月12日放送の『鬼滅の刃』第二夜”浅草編”で判明したこと

 2021年9月12日放送の『鬼滅の刃』第二夜”浅草編”では、最後に「大正コソコソ噂話」がふたつ披露されました。

 ひとつは珠世さんが「身体を改良後、紅茶だけは飲めるようになっている」でしたが、問題はもうひとつの方です。

「鬼殺隊の中でも知る人ぞ知る鬼の逃れ者として注目されていた」

 珠世さんの存在は「鬼殺隊の中でも知る人ぞ知る鬼の逃れ者として注目されていた」ことが、しっかりとオンエア上で語られました。

 お館様は完全に、狙って炭治郎を浅草に派遣したのだろうと思います。

 普通の隊士なら珠世さんを見つけてもそこから先はないでしょうが、炭治郎なら何か特異な結果を持って帰って来てくれると、「先見の明」で確信していたに違いありません。

 そう、みんなお館様の掌の上なんですよ♪

まとめ

「珠世さんによろしく」というセリフは、

 「鬼になった妹を連れて行動している」として糾弾された炭治郎が、倒すべき鬼と協力体制をとったことで再び疑念をもたれないよう、事前に「珠世さん」の名前を”柱”たちの前で出して布石を打ち「炭治郎を守るため」だったという意図と、

 「炭治郎もちゃんと自分から報告するように」「私には隠し事は出来ないよ」という、お館様の戒めも含まれた、鬼殺隊の一員としての自覚が乏しかった炭治郎に対する「注意とけん制」の意図 、

の二つの意図を持ったセリフだったと考えます。

 どうしてお館様がいろいろと把握しているのかは書かれていませんが(鎹鴉が報告しているとしか考えられませんが)、お館様は常に全体を把握して、計画的に発言・行動しているのがよく分かります。

 お館様を見ていると、浅草に派遣した炭治郎が期待以上の特異な結果を持って帰ってきたことを、なんだか嬉しく感じているようにも見えてしまいます♪

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