【研究】我妻善逸【霹靂一閃】
「雷の呼吸」の使い手、我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)。公式年齢は16歳。誕生日は9月3日です。
公式スピンオフ小説『鬼滅の刃 しあわせの花』によると、白詰草の冠をつくるのが昔から上手だったそうです。
- 年齢:16歳
- 誕生日:9月3日
- 出身地:東京府牛込区(現・新宿区牛込)
- 身長:164.5cm
- 体重:58㎏
- 趣味:花札、双六
- 好きなもの:甘いものや高いもの(うなぎなど)
- 呼吸:雷の呼吸
- 階級:癸(みずのと)→庚(かのえ)→丙(ひのえ)
CVは下野紘(しもの・ひろ)さん。『鬼滅ラヂヲ』によると、下野さんは「汚い高音選手権」と呼ばれるオーディションを制して善逸役をゲットしました。
これには善逸役を希望していた伊之助役の松岡禎丞さんも「あぁ…うん、うるさそう」と、納得の人選だったみたい。
下野さん自身も「絶対獲りたい」と思っていた役で、実際演じてみると自分でも気が付いていなかった伸びしろを発見したとのこと。監督からのディレクションもほぼなく、自由に演じているそうです。
以下、最終話までの内容及びファンブック等の内容を含みます。未読の方はご注意ください。
善逸の生い立ち
幼少時についてはほとんど描かれていない
詳細は不明ながら、善逸には身寄りがありませんでした。
作中で実の家族に触れられていないのは、主要なキャラのうちでは善逸だけです。
「捨て子」だった伊之助が身の上話をした際には、「きっと事情があったんだろ」「本当に捨て子ならおくるみに名前を書いたりしない」「俺みたいにな」と述べています。
このことから、善逸は名前も付けられずに捨てられた捨て子だった、と考えられます。
明治~大正時代は都市化が進むとともにスラム街も多く形成され、捨て子も多かった時代です。公的な保護施設もあまりありませんでした。
誰が善逸に名前を付け、大きくなるまでどうやって育ったか、というのは作中では一切描かれていません。
アニメ版「遊郭編」第2話での違和感あるシーンから生まれを考察
アニメ版「遊郭編」第2話では、宇髄天元によって人力車で遊郭の下見に連れていかれます。
宇髄さんに「車から降りるなよ」と言われているにも関わらず、善逸は何かに誘われるように車を降り、ふらふらと郭内を彷徨い始めます。
女の子大好きな善逸ですが、このときは女の子がたくさんいるから浮かれているという感じではなく、まるで自分の知らない何かを探しているように見えました。
善逸は耳が良いので、遊女たちの「悲しい音」が聞こえていたのでしょうか?
その可能性もありますが、わたしは「善逸はこの場所を知っているのではないか」と感じました。ただ、善逸自身もはっきりとは覚えてはいない。
もしかしたら善逸は遊郭、もしくは似たような花街で生まれたのかもしれません。そして、幼いうちに捨てられたか、誰かに預けられたのではないでしょうか。
それでも善逸には遊郭の灯りや音といったかすかな記憶が残っていて、無意識にふらふらと、記憶をたどるように遊郭内を彷徨い始めてしまったのではないかと想像しています。
「牛込」という出身地から
善逸の出身地とされる牛込の周辺には当時スラム街もありましたが、大正時代に隆盛を誇った花街・神楽坂もありました。
生まれた地域を考えると、母親は神楽坂で働く芸者さんや下働きの女性だった可能性も見えてきます。
善逸が琴や三味線に才能を見せたのも、生まれる前から身近にあったものだからかもしれません。
14~15歳ごろ、借金のかたに育手のもとへ
善逸は耳がとてもよく、相手の心音や考えていることまで分かってしまう能力の持ち主です。
でも自分が信じたいものを信じる傾向があるので、よく人(特に女性)に騙されました。そして女性とは手をつないだことすらないのに、女性のために借金を背負ってしまいます。
その借金を肩代わりしてくれたのが、育手である元”鳴柱”桑島慈悟郎です。借金を肩代わりしてもらったかわりに、”鬼殺隊士”の修行に入ることになります。
ただ才能はたしかにあったみたい。それを見抜いた桑島さんすごい。
公式スピンオフ小説『鬼滅の刃-しあわせの花』第2話では、修行中にあった善逸のエピソードも描かれています。
修業時代の回想や夢では「白詰草」の他に、「桃」の木もよく一緒に描かれています。
善逸の”借金”はいくらぐらいあったの?
鬼滅の刃公式ファンブック『鬼殺隊見聞録 』によると、借金の額は、現在の額でいうと60万円ぐらいだそうです。
元・鳴柱の桑島さんにとっては大した額ではなかったかも?参考までに言うと、”癸”の隊士の給料は現在の額で20万円ぐらいです。
「最終選別」で最初からぼろぼろだった理由
藤襲山で行われる鬼殺隊士となるための「最終選別」。始まる前に集合した時点で、善逸はすでにぼろぼろでした。
これは「最終選別」に行くのを善逸が嫌がったため、師匠の桑島さんがビンタしたからだそうです。それでもやっぱりしっかり合格してしまう善逸でした。
「本当の善逸」と「演じられた善逸」
「お笑い担当」「ヘタレキャラ」という印象のある善逸ですが、誰かを守るための「心の強さ」だけは常に持ち続けています。
また意外ですが、作中では心の奥にある本心を誰かに語ったことがありません。
どこか冷めているような言動も見られ、普段は表面的な「善逸」を演じている感じもします。
人を大切に思う心の持ち主
「鼓屋敷」で炭治郎を信じて禰豆子の入った箱を怪我もいとわず守り続けたシーンは、数少ない、わたしが善逸を「かっこいいじゃん」と思ったシーンです。
禰豆子が「鬼」であるという事実も気にせず、炭治郎の「優しい音」を信じて彼らを守り抜くことが出来る善逸は、「優しさ」だけではない、人を大切に思う「心の強さ」も持っています。
「遊郭編」でも、女の子を怪我させた上弦の鬼に対して、ひるまず「謝れ」と言い切りました。
「やさしさは人の心をどこまでも強靭にする」
師である桑島慈悟郎は、公式スピンオフ小説『鬼滅の刃-しあわせの花』第2話で善逸に、「いい剣士」とは何かを説いています。
「誰かの為に振るう刃」は何よりも強く、「弱さ」を知り「やさしさ」を持つ善逸こそ、弱きものの心に寄り添ってその盾になることが出来るのだ、と桑島さんは善逸に説いています。
善逸も桑島さんを尊敬し憧れている描写があります。
善逸が鬼殺隊を続けていくことができたのも、この「誰かの為に」という思いと、師への憧れがあるからこそだったのではないでしょうか。
煉獄杏寿郎との共通点
表現こそ違えど、「弱さ」を認めて「やさしさ」を持ち、「誰かの為に」戦うという考え方は、”炎柱”煉獄杏寿郎さんの目指した剣士像ともつながっています。
また隊士になるにあたって、どちらも鬼に個人的な恨みを持っているわけでもありません。
ふたりとも鬼と対峙するにあたっては、「鬼に対する怒りや憎しみ」よりも、「誰かの為に役立ちたい」という動機が先にきているのではないでしょうか。
そして杏寿郎さんも善逸も、口数は多いわりに「心の奥底にあるもの」は人に語っていません。
意外に二人は似たタイプで、もし善逸が年齢を重ねて”柱”になっていたら、杏寿郎さんのように、後輩の面倒をよく見て親しみやすさもある「理想の”柱”」をやっていたかもしれないと思います。
実は”柱”に向いている?
「かまぼこ隊」や「同期組」のなかではもっともヘタレキャラでお笑い担当になることが多い善逸。でも実は5人のなかでは、竈門炭治郎や栗花落カナヲと並んで、”柱”に向いている人物と言えます。
炭治郎もしのぶさんも認めていた序盤での実力
修行中「雷の呼吸」の技のうち基本の型しか習得できなかったとされる善逸。
しかし、鼓屋敷では炭治郎が「善逸は強い」と感じ、那田蜘蛛山では胡蝶しのぶに「上手く呼吸で毒の巡りを遅らせている」とほめられています。
このあたりは隊士になって間もない頃です。
さらに善逸の修行期間は1年(炭治郎は2年修行した)とされていることから、呼吸術に関しては炭治郎よりも早く使いこなせるようになっています。
公式スピンオフ小説『鬼滅の刃-しあわせの花』第2話では、まだ修行中にも関わらず異形の鬼の頚を斬っていますし(※ちゃんと日輪刀で斬ったの?という疑問は残りますが)。
「全集中・常中」も「蝶屋敷」で短期間で習得しており、まさしく「やればできる子」なのです。
戦績だけみたら実に優秀
鼓屋敷ではちゃんと子供を守って脱出させ、鬼も倒しています。
那田蜘蛛山では、先輩隊士たちが敵わなかった蜘蛛鬼を倒しています。その結果、みんなの蜘蛛化の進行を遅らせることができました。また善逸自身も、呼吸で毒を制御しながら胡蝶しのぶの到着を待てています。
無限列車では炎柱の指示に従って車両と乗客たちを守り切りました。狭い列車内での正確で素早い太刀筋は、たしかな実力を持っているとみんなに認めさせるものです。
遊郭ではいったん堕姫に捕らえられてしまったものの、その後は仲間と連携をとりつつ、正確な判断で堕姫を引きつけて追い詰め、音柱の負担を減らし、伊之助といっしょに堕姫の頚を斬りました。
と、前半部分だけを見ても善逸は実に優秀な戦いぶりをみせています。
三人のなかでは怪我も少なめですし、日輪刀もいちども折っていません。遊郭では隊服も着ていなかったのに、です。寝てましたけどね。
誰かを守るために汚れ役も引き受けることができる
いつもうるさく泣き叫んで女子を追いかけているイメージの善逸ですが、どこか冷めているところがあるように思います。
「無限列車編」で出てきた善逸の無意識領域は真っ暗で重く、光が差していませんでした。炭治郎とは正反対です。「精神の核」を見ることは出来ませんでしたが、ちょっと見てみたいですよね。
「無限城の戦い」では情にとらわれることなく、倒すべき上弦を新しく生み出した自らの技で撃破しました。
炭治郎が鬼となってしまった際には、対峙した伊之助は思い出が蘇って泣いてしまい、炭治郎を斬ることができませんでした。でももし善逸が対峙していたら、炭治郎や禰豆子のために、間違いなく炭治郎を斬ったと思います。
「心の優しさ」を持ちつつも大局を判断して「情」にとらわれず行動できる善逸の性格は、”柱”のなかにひとりはいないといけない存在なのではないでしょうか。
誰かを守るために自分が汚れ役や悪役となることができる、そんな心の強さを、善逸は持っているのです。
本編終了後
本編終了後は、炭治郎たちとともに雲取山で暮らし始めました。
『鬼殺隊見聞録・弐』に後日談が掲載されています。
問題は大ありで、さすがの炭治郎にも注意されたりしていますが。
禰豆子に対する不死川実弥や冨岡義勇の行動を目撃してからは彼らを敵認定し、禰豆子と仲良くしてる伊之助にさえ嫉妬するほど禰豆子が大好きみたい。
めんどくさい男です。
でもこれは、嫌われていないという確信が欲しいから、かまってもらうための行動をしている、ともとれます。
善逸の心の考察
ここからは、善逸の生い立ちから内面を考察していきます。
ひとりぼっちだった善逸
育手となる桑島さんに出会い鬼殺隊に入るまで、善逸には心から信用できるひとがおらず、ひとりぼっちだったのだろうと思います。
「鬼殺隊」がたしかな「居場所」に
鬼殺隊と出会って初めて、信頼できる大切な「家族」「友人」「仲間」が出来たのではないでしょうか?
そして、「誰かの為に」戦うことで「自分が役に立っている」という実感を持つことができ、「感謝される」という喜びも知りました。
鬼と遭遇することは恐ろしいと思いつつも、鬼殺隊は善逸の「居場所」になっていったのです。
「鬼殺隊」解散後の善逸
でも鬼殺隊が解散したことで、刀を握ることもなくなりました。
雲取山で炭治郎や伊之助たちと暮らし始めますが、山育ちで半自給自足の生活に慣れている彼らとは違い、善逸は都会育ちです。慣れない生活に焦りや戸惑い、劣等感・疎外感を感じたのではないでしょうか。
善逸は再び自分の居場所や自分自身の存在価値が分からなくなり、みんなとの距離感がつかめなくなってしまったのだと思います。
「嫌われていないか」を確認するためなのか、自分でも理由は分からないままなのか、禰豆子に構ってもらおうとしたり、目に余るおかしな行動を善逸はとりだします。
そんな善逸に炭治郎が、分かってか分からずか、「もう剣士ではないからかっこいいところは見せられない」「生活をちゃんとしないと」と注意やフォローをしてくれたのは、とても良かったなと思います。
『鬼殺隊見聞録・弐』では炭治郎視点からギャグ的な描写になっていますが、善逸の視点で読んだ場合、決してギャグだけで終わらせることのできない内容となってます。
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なぜか人気がある
へタレっぷりがものすごいのに、途中途中で「覚醒」してとんでもない実力を見せたり、義理堅い一面や深い優しさを見せたりするので、そういうギャップが読者に人気らしいです。
あちこちで行われる人気ランキングでも、常に上位入りしてます。
知り合いは「かわいい」とも言っていました。母性本能をくすぐられるのでしょうか?わたしにはいまいちよく分からない、初期からの善逸の人気っぷりです。