【十二鬼月】堕姫&妓夫太郎【上弦】
なぜか憎みきれないこのふたり。喧嘩はするけれど、とてもお互いを思いあっている兄妹です。

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アニメ版ではとくに、炭治郎&禰豆子兄妹との対比・対の構図が鮮明に描かれていました。
後のほうで「113年ぶりに上弦が~」みたいなセリフが出てくるので、少なくとも113年以上前、1800年頃の江戸時代に「鬼」になった計算です。
堕姫のCVは沢城みゆき(さわしろ・みゆき)さん、妓夫太郎のCVは逢坂良太(おおさか・りょうた)さんです。
沢城さんは事前発表されましたが、みんなの予想通りのキャスティングでした。逢坂さんは放送時では誰も逢坂さんだと気が付かず、エンディングで初出した名前を見てみんながびっくり、という感じでした。
以下、最終話およびファンブック等の内容を含みますので、未読・未視聴の方はご注意ください。
堕姫&妓夫太郎の略歴
ふたりは吉原の遊女のもとに生まれました。妓夫太郎は吉原から出ることもできたかもしれませんが、女の子である梅(堕姫)は、自分から吉原の外に出ることは許されなかったと思われます。
「鬼」になるまで
幼少期
ふたりは吉原の羅生門河岸(らしょうもんがし)で生まれ育ちました。ここは吉原のなかでも最下層で、病気や高齢などにより店で働けなくなった遊女が最後に行きつくところです。
幼い頃は非常に厳しい暮らしをしており、まともに食べることもできない生活でした。
ものごころついてから
しかし堕姫(本名は”梅”)は幼いときから美しく、本人がその美しさを自覚してからは美貌を武器にうまく立ち回り、食べものに困ることはなくなっていきました。「白梅ちゃん」と呼ばれて可愛がられていたそうです。
また妓夫太郎も腕っぷしの強さを活かして取り立ての仕事を始め(回収率120%!)、二人の暮らしはこれからいい方に向かっていく、はずでした。
「鬼」となる
梅が13歳のときでした。侍から簪(かんざし)をもらった際に兄のことを侮辱されたため、その侍の目を簪で突いて失明させてしまいます。
その報復で生きたまま縛られ燃やされてしまったところを、妓夫太郎に発見されます。
妓夫太郎は侍たちに反撃しますが、自身も大怪我を負ってしまい、死にかけます。
そのとき、当時上弦の陸だった童磨に出会い、「血」を分け与えられて、ふたりそろって「鬼」となりました。
補足
単行本第10巻収録の第83話では、堕姫が「火」を怖がっている描写があります。アニメ版ではさらにしっかりと描かれていました。
人間だったときのことを思い出すと、こうしたつらい記憶も思い出すことになります。鬼になる前の出来事を忘れてしまうのは、防衛本能のひとつなのかもしれません。
ふたりの名前の由来
「妓夫太郎(ぎゅうたろう)」は、妓夫太郎が人間だったころから名乗っていた名前です。これは吉原で働く男性が「妓夫(ぎゅう)」と呼ばれていたためだと思われます。
逆に言えば、まともに名前をつけてもらえていなかった、とも考えられます。
「堕姫(だき)」はもとの名前は「梅(うめ)」でした。これは母親が「梅毒(ばいどく)」に感染していたからだとされています。病気にかからないようにあえてつけた可能性もあるので本当のところは分かりませんが、「梅」自体はよくある名前だと思いますが。
また「堕姫(だき)」に関しては、「荼枳尼(だきに)」という神からとられたのでは?という解釈もあります。もともとはインド起源の神様で、裸身で虚空を駆け人肉を喰らう魔女、というイメージで、中国や日本で少しずつ伝承が変化していきます。日本では白狐に乗っていたり、鎌などを持つこともあるようです。
無惨さまとの関係
無惨さまはふたりを気に入っていたようです。
堕姫については「(妓夫太郎にとって)足手まとい」「頭の悪い子供」としながらも、第9巻で会った際には色々と言葉をかけ、堕姫も無惨さまに心酔しているように見えました。
『鬼殺隊見聞録』122ページによると、妓夫太郎については境遇や貪欲な性格を評価していたそうです。
母親との関係
妓夫太郎と堕姫の母親は、遊郭・吉原の羅生門河岸の遊女でした。
ここは吉原でも最下層の場所で、病気や年齢的な問題などによって他の店に置いてもらえなくなった遊女が、最後に行き着く場所です。
母親は妓夫太郎を嫌い、堕姫(梅)のことも髪色・目の色を気味悪がっていました。
あるとき母親が剃刀で梅の髪を切り落としているところを妓夫太郎が力ずくで止め、それ以来、母親は妓夫太郎を恐れてふたりから距離をおくようになりました。
おそらくですが、母親は女の子である梅を遊女屋に売ろうと考えていたのだと思います。ところが髪や目の色が特殊だったことと、母親が病気だったために、思うように買い手がつかなかったのではないでしょうか。
母親のかかっていた病気
ふたりの母親は梅毒にかかっていたと見られます。「梅」という名前も母親の病気からからとられた、と妓夫太郎も言っています。
梅毒は江戸時代に特に流行した性病で、吉原では多くの遊女がかかっていたそうです。昔の病気ではなく、現代でもまた流行しています。
妓夫太郎の外見からは「先天梅毒」の特徴が見られます。
母子感染もする病気ですが、生後すぐは見た目無症状の赤ちゃんも多く、感染率も母親の感染状態などによって変化します。生後しばらくしてから症状が出てくる子が多くおり、感染していても生涯にわたって症状が出ないままの子もいます。症状自体も、歯や皮膚、骨や内臓まで、いろいろなものがあります。
母親の生死
生死については原作では詳しく書かれていませんが、アニメ版「遊郭編」では部屋で倒れている様子が描かれており、妓夫太郎のセリフから、ふたりが幼いうちに亡くなったことが分かります。
梅の外見について
梅には先天梅毒らしき症状はあまり見られませんが、症状が出ない子も多くいるので、感染していないかどうかはわかりません。ただ、先天梅毒で白斑を生じる場合もあるので、梅の色素が薄いのは少し気になります。
「アルビノ」の可能性
一方で、髪色・目の色はアルビノの特徴にも見えます。これは梅毒に関係なく、誰でも確率的に発生するものです。
もしアルビノだとすると弱視だった可能性も高く、回想シーンで梅の目線があいまいだった点や、炭治郎の「眼」に堕姫が注目した理由、妓夫太郎が「眼」を貸した理由にも、また違うものが見えてきます。
大店には入れなかった?
梅の美しさなら大店にスカウトされるのでは?とも思いますが、梅が羅生門河岸で病気の遊女から生まれたことは、吉原内に知れ渡っています。
遊郭の女性たちは、多くが借金や貧乏のために売られてきた女性です。そのことをお客さんたちも当然知っており、遊女たちに対するそもそものイメージは「親兄弟のために苦界に身を沈めた孝行娘」というものでもありました。梅には当然それもありません。
「身一つでやってきた孝行娘」が「誰もが憧れる花魁」になるというストーリーをブランドにする大店に入るのは、やはり梅には難しかったのかもしれません。
「ずっといっしょ」
「俺たちはふたりで最強」「ずっといっしょ」という言葉のとおり、「鬼」になってからもふたりはずっと一緒でした。
それでも、妓夫太郎は最後に妹に「明るい方へ行け」と突き放しています。自分だけが地獄へ行けばいいと。
このシーンについては別の記事でも書いていますので、良かったらそちらもごらんください。
妓夫太郎は「自分が育てたから妹はこんなことになった」と後悔しています。でも堕姫(梅)は、「兄がいたから生きてこられた」「大好きな兄」「ずっといっしょ」と真っ直ぐに兄を慕っています。
そして「ずっといっしょ」という約束を思い出した妓夫太郎は、梅を背負ってまたいっしょに歩き出します。
地獄と天国の間にあるとされ、罪を浄化するという煉獄の炎。その炎を浴びながら歩く妓夫太郎は、人間の頃の姿に戻っていました。
妓夫太郎がしているかも知れない誤解
もしかしたら妓夫太郎は、妹が侍の目を簪で突いた理由を未だに知らないか、誤解しているのかもしれないと思います。
作中で「自分のことを悪く言われたから」というような描写が、妓夫太郎の口からいっさい出てこないからです。妹が簪欲しさに侍の目を突いた、と思っているのかも知れません。
「鬼」になると「人間」だった頃の記憶を失うことが多いので、堕姫も詳しくは話していなかったのでしょう。もしくは「そのことは語りたくない」と思っているのかもしれません。
兄妹の絆
悲惨な境遇ゆえに道を踏み外してしまったふたりですが、妓夫太郎がしっかりと妹を守り育てたことだけは確かです。
また妹がいたからこそ、妓夫太郎も生きてこられたのではないでしょうか。
炭治郎と禰豆子も、あの雪の日にたまたま出会ったのが冨岡義勇ではなく童磨だったら、きっと「ずっといっしょ」という思いを胸に、童磨の甘い言葉に誘われてふたりそろって「鬼」となっていたでしょう。
いつか生まれ変わることが出来たら、また仲の良い兄妹として生きて欲しいと思います。

