研究・考察

【考察】「稀血」の設定は不要だった?いえ必要です

藤村さき
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※ネタバレとまではいかないものの、アニメ未放送部分の内容を含みますので、原作未読の方はご注意ください。

「稀血(まれち)」。アニメ「竈門炭治郎立志編」でも少し出てきた、珍しい血液で、鬼にとっては御馳走かつ栄養満点、この血を持った人間は鬼に狙われやすくなるそうな。

 そして”風柱”不死川実弥の設定でも不可欠な「稀血」。

 一部のネット記事などで、この設定は不要だったのでは?と言われているのを見かけました(某大手検索サイト系の記事だった)。

 たしかに不死川実弥は基本的に強く、「稀血」なしでもストーリーは成立しそうです。でもこの設定はやはりあった方が良い、いや必要だと思います。

「稀血」が不可欠だった「柱合裁判」

 「稀血」が絶対に必要なシーンがありました。「柱合会議」で実弥が禰豆子を刺してから自らの血を差し出した、「血の誘惑」のシーンです。

”柱”たちを納得させる禰豆子の「特殊性」

 あの場にいた”柱”たちは、実弥さんの持つ「稀血」の効果について知っていたはずです。

 「稀血」でも理性を抑えられる「特殊な鬼」としての禰豆子を演出し、”柱”たちに対して禰豆子の特殊性の説得力を高めるためにも、実弥さんに「稀血」という設定は必要だったのです。

あとから気付く「読者への仕掛け」

 ただこの段階では、実弥さんが極めて特殊な「稀血の中の稀血」を持っているということは読者には明かされていませんでした。

 読者はのちのちまで読んでから、このシーンを思い出したときに「あっ」と気付くのです。

 そして思うのです。「え、すごい」と。さらにそして作者の仕掛けをもっと読みとろうと、作品の深みにはまっていくのですよ。

「文学的」な深さを持つ『鬼滅の刃』という作品

 吾峠先生は「主人公に関係しない話をカットしまくって」話数を調整して描いていったそうなので、”柱”たちが何を考えて行動していたか、という理由は、原作では回想シーン以外ではほとんど描かれていません。

参考:描きたい!!を信じる 少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方(週刊少年ジャンプ編集部) (集英社単行本)

 直接に描かれていないため、さらっと読んだだけの人は、『鬼滅の刃』が持つ深さに気付かないかもしれません。

 でも読み込むほどに、描かれていない部分に想像がふくらみ、それらが自分のなかだけではありますが、論理的にストーリーとしてつながっていく感覚を味わいます。

 「読者があとから気付く仕掛け」「登場人物の行動心理」「時代との整合性」など、考えれば考えるほどたくさんの研究材料的なものが発掘できるのです。

初期段階から準備されていた「稀血」の設定

 「稀血」の設定自体は、『鬼滅の刃』の前身作である『鬼殺の流』にもあるので、吾峠先生のなかではかなり初期から温めていた設定だったと考えられます。

 『鬼殺の流』は『公式ファンブック鬼殺隊見聞録』にネームが三話まで掲載されています。

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