【考察】義勇さんが炭治郎に怒ったセリフに込められたメッセージ【第1巻にて】
これが何度読んでもわかりにくいんですよね。義勇さんがよく「説明が足りませんよ」と言われているのは、こういうことなのかと思ってしまいます。
公式ファンブックでは、「炭治郎を絶望から立ち直らせるため」となっています。
でもせっかくですから、もうちょっと考えてみようと思います。
義勇さんの心理を考察
禰豆子は当然のごとく斬る予定
まず炭治郎が禰豆子に襲われたのを義勇さんが助けに入ります。
義勇さんの腕とあの体勢なら、ここで確実に禰豆子の頚を仕留められたはずです。でも炭治郎が禰豆子をかばったので、炭治郎を斬らないように義勇さんは切っ先をずらしました。
この時点で義勇さんはいろいろ驚いたはずです。「かばったこと」「炭治郎の反応速度」ともに想定外だったはずです。
次に炭治郎が「俺の妹だ」と叫んだとき、義勇さんは辛そうな表情をしています。
そして「それが妹か」と問い、自分が今から妹を斬ることに対して、納得させようとしているように見えます。
その後も嘆願する炭治郎に対して、義勇さんは「斬ること」について納得してもらうよう説得を続けているように見えます。
そのまま斬っても良いところをすぐ斬らないのは、やはり兄の目の前で妹を斬りたくない、という義勇さんの心が見えるようです。
この時点まで、義勇さんにとって「禰豆子を斬る」ことは確定事項だったと思われます。
禰豆子に関する義勇と炭治郎との話し合い
炭治郎との会話がつづくシーンです。
炭治郎の提案
禰豆子を奪われた炭治郎は、義勇さんに提案をしています。
「俺が禰豆子に誰も傷つけさせない」「人間に戻す方法を探す」「家族を殺したやつも見つけ出す」といったものです。
ここは想像になってしまいますが、義勇さんは基本的に優しいので、炭治郎の必死の嘆願に少し同情してしまったのかもしれません。
そして禰豆子はまだ人間を喰っていないので、その点でも少し「斬る」という考えが揺らいだのではないでしょうか。
義勇さんが炭治郎に感じた「適性」
またこの時点で、最初の「反応速度」とあわせ、義勇さんは炭治郎に「鬼殺隊士」としての適性を感じ取ったのかもしれません。
炭治郎の提案を受けた直後、義勇さんは禰豆子に刀を押し当てます。
これは炭治郎の覚悟や反応を試した、とも受け取れます。
「鬼狩りの仲間に入る」ともし炭治郎が言えば、きっと義勇さんは了承し、禰豆子に対しては違う処置がとられたと考えられます。
まだ人を喰っていない鬼は珍しいと思いますし、捕らえられてどこかで保護されることになったも知れません。
義勇さんは胡蝶姉妹の「鬼と仲良くすればいいのに」という話を以前から聞いていたので、それも頭をよぎったのではないでしょうか。
炭治郎の土下座を見て
でも炭治郎は禰豆子まで殺されてしまうという恐怖に、心が折れてしまいました。
そして土下座をして「やめてくれ」「お願いします」と頼み込んでしまいます。
そのことで義勇さんは「失望」を感じたのではないでしょうか。
先ほどまで「禰豆子を人間に戻す」「俺が全部ちゃんとする」と必死だったのに、結局すぐに炭治郎の心が折れてしまったことに対する「失望」です。
鬼殺隊士となるにはふさわしくない反応だからです。
そして例のセリフです。
「生殺与奪の権を~」ばかりに注目が行ってしまいがちですが、この一連のセリフで義勇さんは「治す方法は鬼なら知っているかもしれない」と述べています。
またセリフ全体を通して、「怒れ」「強くなれ」「戦え」というメッセージが込められており、自分自身は恨まれても構わないという覚悟を感じます。
そして、止めのように義勇さんは禰豆子を刺したのです。
この禰豆子を刺した行為により、炭治郎は攻撃に転じて義勇さんに反撃します。
そのときの炭治郎の「自分は死んでも構わない、死んだ後で相手を倒す」という意識と戦略は、義勇さんにとっては想像以上のものだったと思われ、「鬼殺隊」へ導くことを決定付けました。
義勇さんは、そのまま禰豆子を斬ってしまえば、炭治郎はきっと「絶望」にとらわれてしまって立ち直れなくなることも分かっていました。
だから、禰豆子を斬るよりも前に、炭治郎を「怒り」で奮い立たせようとしたのです。自分への恨みや怒りが、炭治郎の生きる力となるように。
最終的には禰豆子が特異な反応を見せたことで、炭治郎とともに鱗滝さんに預けることを決めた義勇さん。しかし、もともとは禰豆子は斬る、もしくは研究材料として確保する、つもりだったと思われます。
おまけ:「昔同じようなことを言って鬼に喰われた奴がいた」というセリフ
このセリフもずっと気になっていたんですが、義勇さんがまだ駆け出しの頃に経験した、ある兄弟のことだったようです。原作にもそんな感じの絵を書いたコマがありますね。
Blu-ray&DVDの特典ドラマCDに収録されているようです。
色々想像がふくらむセリフでしたが、もっともシンプルなところで落ち着きました。
義勇さんが炭治郎と禰豆子に対する義勇さんの行動、いまいち理解に苦しむところもあったんですが、こういう経験をしていると分かれば、義勇さんに対する理解度と好感度があがっちゃいますね。
このシーンの「童磨」との対比について
「遊郭編」後半の回想で童磨が雪のなか登場するシーンと、この雪山でのシーンは色々と対比になっています。
炭治郎が禰豆子をおんぶしているのと同じように、妓夫太郎は瀕死の妹をおんぶして歩いています。
どちらも妹を助けたいと必死です。
そして、炭治郎の前には厳しい言葉で人間の尊厳へと導く冨岡義勇が現れ、妓夫太郎の前には甘い言葉で鬼へと導く童磨が現れました。
もし炭治郎の前に現れたのが義勇さんではなく童磨だったら、きっと炭治郎は鬼となった禰豆子を助けるため、そして「ずっといっしょ」にいるために、禰豆子とともに「鬼」となる選択をしていたのではないでしょうか。
まとめ
義勇さんが怒ったシーンでは、炭治郎に対して「怒れ」「強くなれ」「戦え」というメッセージが込められています。
また、そのためなら自分自身は恨まれても構わないという義勇さんの覚悟も感じます。
単行本17巻の105ページでは「炭治郎は命や尊厳を奪われないために戦えるようになった」という内容の心の声も義勇さんが発しており、「命や尊厳を手放さない」ことは大事だと義勇さんは考えてもいるようです。
最終的には炭治郎の持つ「戦う動機」「潜在能力の高さ」「禰豆子の特異性」に気づいたことで、彼らを鬼殺隊へ導くことにしたものの、このシーンはいくつもの運命の分かれ道が潜むシーンだと思います。
というか、義勇さんって炭治郎に鱗滝さんを紹介はしたけど、ひとことも「鬼殺隊に入るつもりは無いか」とか聞いてませんよね?これを最初にひとこと言うだけで、かなり流れが変わっていそうです。もちろんそれで悪い方にすすむ可能性もありますけれども。